• 兄弟キョウダイ

    姉妹シマイ

    それなら3人は?4人は?

    兄と妹、姉と弟は?

    誰も教えてはくれないワケカタの話

  • 光るプラスチックの石

    ラジオの再生ボタン

    U型の磁石

    雑誌の付録の何か

    あれが欲しい

    これが欲しい

    小さい頃の記憶

    純粋な欲

    大切にしたい心

    その人間の本能とも言えるべきものは

    いつからいいように利用されてしまったのだろう

  • 映画やドラマを観ていると主役と脇役は同じ顔が出ている。二枚目はあれで、三枚目はこれで。美人はそれだ。皆飽きもせず観ていて、むしろその顔や背中を求めている。名前や立場が違くても、だ。視覚的な物語に出てくる人間性というのは、ごく限られた人間でことが足りてしまうのだろうか。文字を並べ、不定形で朧げな自分の影を浮かべたり沈めたりする。これだけで満足するのはいまや少数派なのかもしれない。

  •  昔の人間はね、元はひとつだったんだよ。そう、文字通りひとつになって必死に生きていたんだ。そしていつからか、羽も持たないのに空を渇望し、終いには上を目指すようになったんだ。…なんでだろうね、昔から煙とバカは高いところが好きと言うけれど。長い目で見れば同じことを何回も繰り返してしまうのが彼らのサガで、まさにバカなんだろうか。昔は追い出したり流したりなんかもしたけど、世代を重ねるごとに記憶が薄まって、身をもって学んだことも抜けていってしまった。何度もやり直す機会は与えてやったのに…!

    小刻みに揺れ始めた右足に視線を留まらせていることに気づくと、彼は自嘲気味に笑う

    そんなに意外かい?僕だって彼らと同じ姿形をしているんだから、同じようにイライラもするし癇癪だって起こしたくなるさ。だけど今回はぐっと堪えて、お望み通りソラの彼方に飛ばしてやる代わりに、彼らをひとつではなくした。そう、彼らが他の動物たちは持たない言葉を細分化してやったんだ。良いアイディアだと思わないかい?色形も違う彼らを、ひとつにまとめる役割を果たしていた繋ぎ。それを取り払えば、上を目指すこともなくなる。そら、僕の目論見通り。彼らは言葉が通じ合わなくなるや否や、疑心暗鬼になり、互いをいがみ合い始めた。中には言葉が通じ合うのもいたりするから、徐々に群をなした。面白いことに、色形である程度群をなす一定のパターンがあったようだ。

    さあ、これで引き継ぎは終わりだ。僕は死んだとうそぶく人間もいたらしいけど、それは間違いだ。今、ここで、初めて死ぬんだ。そしてこれからは君が僕の役割を果たすんだ。君を通してのみ彼らはまた一つになれる。その果てに彼らが今度はどんな姿を見せるのか、見届けられないのは残念…。…いや、これは本心ではないな。残念どころか、むしろ、せいせいしてる。無責任と思われても仕方ない。しかし、これこそが私なんだ。

  • 椅子があるということは、そこがどんなに荒廃していようと、神秘的だろうと、屋内や屋外だろうと、海の底に沈んでようと、木星の表面を漂っていようと、二足歩行を始めたおかげで腰と頭を痛めやすくなった生き物がいるのだろう

  • この水が

    この滴る雪解け水こそが

    閉ざされたましろな世界を開く

    生命の奔流となるのだ

    覗く青空 伸びる若芽

    陰鬱さにかしらをもたげていた心さえも

    今日ばかりは陽の目を浴びることができる

    とつとつと奏でる音よ

    わたしたちはいま 春を迎えようとしている

  • 爺さんたちの討論
    サラリーマンのデスクワーク
    おっちゃんのタバコタイム
    黒ネクタイに首を吊られ

    すする苦い珈琲
    歯医者のようなオルゴールBGM

    模様の上に模様がかぶさる

    遠い記憶への引力

    そうだ

    あの人には十二銭用意してあげよう

    何かと入り用だから、ね

  • 全てが挑戦で

    全てが新鮮で

    ローマ字を覚えてたどたどしく文を送るのもそうだし

    自分より身長が倍の人がひしめく店に入るのもそうだし

    鼻をつく匂いにおそるおそる口に運ぶのもそうだし

    レンタルショップでCDを借りてパソコンに転送するのもそうだし

    iphoneはないからPSPで学校帰りに音楽を聴くのもそうだし

    人によって携帯の着メロや光る色を変えるのもそうだし

    全てが体験で

    だけどもう再現で

    おっと、少しばかり記憶を掘り起こしすぎたようだ

    過去にとらわれているあいだの横顔はどこかもの悲しいから

  • 死について考えるとき

    そこに意味を求めてしまう理性は

    野垂れ死ぬことを恐れ

    いままでの自分の生には

    これからの自分の生には

    大義があるのだと思い込みたいのだが

    死とは結局のところ

    つむじ風のように現れ

    凪いで 

    終にはあの人を連れ去ってしまうのだ

  • 首を前後に揺らす姿はコマ送りのよう

    黒い地面に落ちる熟れすぎた果実をついばむ上で

    青空に伸びる黒い節々にとまるトリは朝日を浴びて軽やかに羽ばたく

    なぜ同じ羽を持つのにぼくらは鈍く光るばかりなのだろう

    他の皆は下を見るばかりでそんなことには気付きやしないことに気付いたぼくはきっと何かが変わる