• issue1

    舟

    issue 1

    人生百年時代。

    この単語を聞いた君は、何を思うだろうか。

    鶴は千年、亀は万年。

    ヒトは遂に、若輩者ながら列の後ろに並ぶことが許されたのだ。

    やり残したことだってたくさんある。

    何て素晴らしい時代じゃないか。

    遠くを見やる目は細く、口角は緩やかに持ち上がる。

    …そんな君のもとに、首元までぴしりとネクタイを締め、透明な商品を携えた精悍な男がやってきてこう告げた。

    「老後の資金、介護のことは考えたことはありますか?」

    「適切に資産を運用していかないとこれから先、まずいですよ。」

    「今の我々には長生きはリスクですからね。」

    男は屈託のない笑顔を見せた。