issue31
遊郭通いの彼は言う。
哲学、道徳、芸術、宗教が人としての在り方だと。
なるほど、確かに、私が芸術にただ恋い焦がれていたのは、人として在りたいからだったのだ。
しかし彼は続けて言う。
それでも芸術はあくまで趣味を通じて存在を翫賞するだけで、根本的に存在を会得するには哲学が必要なんだ。
哲学だけじゃない。道徳も、宗教も。
私はせいて、彼の言葉を継いで言う。
人間はどれかが欠けていると、それを世間というものに翻弄されてしまうんだ!
発した音は分厚いワタのような空間にしんしんと吸い込まれていく。
返ってくる言葉はまだ、ない。