memory11

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 週末のお店というのは、子連れが多くそれはまるでテーマパークのような様相を示す。おとなしくできない子供たちの迸るエネルギーを肌でいつも感じる。この街がしっかりと生きて、新陳代謝をしている何よりの証拠だ。

 しかし保育園や幼稚園、はては公園までが子供たちの歓声を騒音とし近隣住民からの苦情が上がっているとふた昔前から耳にする。実際、遊具のない公園も増えているらしい(危険だからというよりは、そもそも人が集まらないようにするためなんだろうと邪推してしまう)。

 その日は忙しい時間帯も過ぎ、のんびりと接客をしているとどこからかか細い声が聞こえてくる。消え入るような声は初め聞き取れなかったが、発生源を探しているうちに音が意味を持ち始めた。パパを探している迷子のようだ。比較的長く在籍しているこの店で迷子は今までいなかった。親を探す甲高い声とそれに遠くから応える低い声のやりとりを聞くことはあったが、今回の弱々しい放物線を描くボールを受け止める存在はいなかった。

 多少焦りを覚えて通路を覗いていくと、3歳ぐらいの子供がいた。下を向いて座り込んでいる。泣いてはいなかったが消え入るような声はそこから流れていた。急いで、しかし怖がらせないように近づいて声をかける。やはり迷子だった。しゃがみ込んで目線を合わせると、子供の見る世界は何もかもスケールが大きい。大きな丸い瞳は不安げに揺れていたが、真っ直ぐにこちらを見ている。受け答えもしっかりとできる子だ。ちょっと待っててねと言い店内を改めてぐるっと回ってみるが、老人や女性がほとんどで、あとは若そうな男が日用品を抱えて静かに物色しているだけだった。子供を探すそぶりを見せる大人はいない。元の場所に戻り一緒に探そうかと言うとその子は頷き、後ろを素直についてくる。後ろからついてきているか気にしつつ進む様は昔のRPGを思い出して変な気分になる。しかし、初対面の子供にはいつも泣かれたり隠れられている身からすると、あまりの素直さとこの子の名を呼ぶ存在が一向に現れないことに違和感を覚え始める。ひとまずレジの方に向かうと、子供はすっと腕を上げ人差し指を伸ばす。そして、小さく、

「パパ」

とだけ呟く。その先には会計をしている老人とレジに並ぶ先程の若い男しかいない。あの人が?僕は思わず何回も聞き返してしまうが、その子はパパに駆け寄ることもせず、指をさしながらひたすら同じ言葉を繰り返している。戸惑いつつも短い旅路になったことに安堵する。レジまで連れて行くがやはりその男は一向にこちらを見ない。子供はパタパタとパパの足元へかけていく。予想はもうついていたが、そこに言葉のキャッチボールはなかった。よその家庭はよそだ。干渉するものでもない。役目を終えた僕は後ろ髪を引かれる思いでその場を離れる。パパと呼んだ男の足元からこちらをじっと見ていたその子の視線が、背中を向けても感じる。