memory6
賛美歌の慇懃とした響きと、工事の荒れくれた機械音が開け放った窓から入り込む。
持参した浅川マキのレコードはゆっくりと回っている。
馴染むことのない音たちが付かず離れず、途切れとぎれに合わさっているが、水が滴り、弾ける音だけは絶え間なく響いている。
「水」と石、「水」と鉄がぶつかり合う音。
青空の陽光を受けてまるでストップモーションのように屋根から滴り落ちているのは雨「水」でなく、雪解け「水」だ。
雨、傘、面倒、音、癒し、外、雪、氷点下、冬、寒い、氷、閉じた世界、溶ける、終わり、冬、暦、始まり、春、雨水、雪解け水、水、H2O、液体、音、ぶつかり合う。
本質は同じはずなのに、言葉が運んでくる物語性は、底知れない。
「今日は久々の青空だから、窓を開けてみたの」
春が待ち遠しい。