「かげおくりって覚えとる?」

「うわ、なんだっけそれ、小学校の頃なんか流行ってなかった?国語の教科書に載ってたやつ」

「そうそうそれ。ちいちゃんのかげおくりってやつ」

「あったあった!なつかしー。休み時間に校庭に駆け出してみんなでやってたわ」

「ねー」

「でもそれがどしたん?急に」

「あのときさ、みんな自分の影に向かっていろんなポーズして、上を見上げてはしゃいどったけど」

「おう」

「実は私何も見えてなかったんだ」

「まじで?頭の上に両手置いてめんたまー!ういてるー!とかやっとらんかったっけ」

「うん、みんなに合わせて見えてるふりしとっただけなんよ」

「ふーん。そうなんだ。でもなんでそんな懺悔みたいに今更?」

けらけらと笑ってやってやる。だって、あまりにも深刻な顔を机の向こう側でしていたから。そんな大したことなんかじゃないよ。気にする必要ないって。本当に懺悔のつもりだったのだろう、俺の言葉にまだ浮かない表情をしているが、心なしかつきものが取れたようにみえた。お前は偉いよ。周りに合わせるだけでなく、それを罪と感じて、ちゃんと素直に謝れて、なにより自分に素直になれて。俺が自分に素直になれないのは、まだ大人になりきれてないからだという言い訳を胸にしまう。だって、目の前の、同じ階段を同じ歩数で歩いてると思ってたやつが気付けば先にいたんだから。